昨年、我々はコーネル・ウォッチ・カンパニーの復活について取り上げた。同ブランドは19世紀にシカゴで創業し、比較的短命に終わったアメリカ発の時計ブランドであり、そのコレクターであるジョン・ウォーレン(John Warren)氏の手によって現代によみがえった経緯を持つ。コーネル・ウォッチ・カンパニーは今回、もしこのブランドが当時から存続していたならどのような時計を製造していただろうか、という想像を別の形で具現化した新作を発表した。完全な“アメリカ製”ではないものの、ウォーレン氏はスイスと同様の工作機械を保有するアメリカ国内の主要サプライヤー数社に目を向け、製造にあたりより多くの工程をアメリカ国内で担う試みを進めている。
コーネルの新作、 “ロージアー”はいくつかのディテールにおいて、サイズアップされたパテック フィリップ Ref.96を思い起こさせるものとなっている。直径37.6mm×厚さ8.5mm(風防含む)のステンレススティール製ケースに、やや幅広な22mmのラグ幅、50mの防水性能を備えている。ダイヤルは懐中時計の収集家が“ダブルサンク”と呼ぶジャーマンシルバー製で、1枚のプレートから成形。そしてダイヤモンドカットののちにフロスト仕上げが施されており、ブランドのためにサミュエル・ベイカー(Samuel Baker)氏が特別にデザインした新しい“シカゴ・ローマン”体によるパッド印刷がなされている。針はブランドが“コーネル・リーフ”と呼ぶスタイルで、横方向に手作業でブラッシュ仕上げが、エッジにはダイヤモンドカットが施されている。
ケース、ダイヤル、リューズはすべてオハイオ州コロンバスにあるアワー・プレジション(Hour Precision)社にて、スイスで訓練を受けた時計師と機械加工技師によりケルン(Kern)社製の5軸CNCマシンを用いてアメリカ国内で製造されている。ウォーレン氏によれば、スイスやドイツの時計製造業者と同様の工作機械を保有する精密加工工房はほんのひと握りしか存在せず、こうした工房と協力することで、将来的に持続可能なサプライチェーンの構築を目指しているという。風防は日本から調達。ムーブメントは56時間のパワーリザーブを誇り、3姿勢で調整されたスイス製のセリタ SW-300-1 bエラボレグレードを搭載している。最終的な品質管理、精度調整、組み立ては、ノースカロライナ州アシュビルにあるThe Watchmaker’s Shopのオーナーであり、CW21およびWOSTEPの資格を持つ時計師、ジャスティン・ハレル(Justin Harrell)氏とセルジオ・ベリオス(Sergio Berrios)氏によって行われる。
ロージアーの予約受付は2025年6月18日(水)から始まり、4週間後の7月16日(水)に終了予定。納品は2025年12月から2026年にかけて順次行われ、注文順(先着順)での配送となる。本モデルは数量限定ではないが、2025年分の割り当ては予約期間終了後には入手不可となる点は注意したい。価格は6200ドル(日本円で約90万円)で、注文時に50%のデポジット、納品前に残りの50%を支払う形式となる。
我々の考え
数週間前、ジョン・ウォーレン氏がロージアーをHODINKEE編集部に持ち込んだ。私はパテック フィリップRef.96を思わせる、この時計のルックスとプロポーションが気に入った。さらに、洗練されたフィールドウォッチのような雰囲気も感じられた。アメリカの時計製造業の衰退を生き残り、その分野で象徴的な存在となった数少ないブランドのひとつ、ハミルトンのような佇まいだ。装着感は非常に快適で、ラグ・トゥ・ラグはやや長めの46.8mmながら、手首に自然に収まる。魅力的なジャーマンシルバー製のダイヤルも相まって、洗練された日常使いの時計としても活躍するだろう。
しかしひとつ気になる点がある。それは価格だ。かなり強気な設定である。ウォーレン氏によれば、彼らはマージンをかなり抑えているという。残念ながら、アメリカ国内のサプライチェーンはより手ごろな価格設定を支えるにはまだ十分に整っていない。とはいえ、この時計の登場は“アメリカ製”を支持する人にとっても、「言葉に責任を持って行動せよ」というような本気の決断を迫るものではない。ムーブメントはスイス製なのだから。しかし、デザインと製造の両面で商業的に成り立つかどうかを試す絶好の機会であることは間違いない。
基本情報
ブランド: コーネル・ウォッチ・カンパニー(Cornell Watch Co.)
モデル名: ロージアー(Lozier)
直径: 37.4mm
厚さ: 8.5mm
ケース素材: 316Lステンレススティール、3ピース構造、手作業による仕上げ
文字盤色:ジャーマンシルバー製、3層構造(1枚のプレートから成形)、ダイヤモンドカットおよびフロスト仕上げ、手作業による仕上げ
インデックス: 特注の“シカゴ・ローマン”数字とチャプターリング、黒インクによるパッド印刷
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ダークトープのヌバックレザーストラップ(同系色ステッチ)、SS製オリジナルバックル(18mm幅)
追加情報: ラグ幅22mm、ラグ・トゥ・ラグ46.8mm
Cornell Lozier
ムーブメント情報
キャリバー: セリタ SW-300-1 b(Sellita SW-300-1 b)
機能: 時・分表示、センターセコンド、秒針停止機能
パワーリザーブ: 56時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(4Hz)
石数: 25
クロノメーター認定: なし
追加情報: エラボレグレードのムーブメント、3姿勢で調整
価格&販売時期
価格: 6200ドル(日本円で約90万円)
販売期間: 注文は2025年6月18日から4週間(50%を注文時に、50%を納品前に支払う)
限定: なし