幾年ぶりにこの時計を改めて見ると、やはりこんなに特別

投稿者: | 2025年12月19日

1968年、ジャガー・ルクルト(Jaeger-LeCoultre)は、当時としては異例の大型ケース(42mm)と、三重構造の裏蓋を備えた「北宸(ポラリス)シリーズ Memovox(メモヴォックス)」潜水用アラーム腕時計を発表しました。その防水深度は300メートルに達し、これはまさに過酷な深海潜水のために打造された一品でした。
しかし、この時計の真骨頂は、内部に搭載されたキャリバー825です。これは時報(アラーム)機能を備えたムーブメントであり、潜水者が水深の制限時間を知らせ、浮上を促すために設計されました。この「極地への冒険」を目的としたMemovoxは、まさに先駆的な精神を持った傑作でした。
時を経て、ジャガー・ルクルトはこのMemovoxのスピリットを現代に蘇らせ、現代人の審美眼と日常ニーズに適応させた「北宸シリーズ」を展開しています。本日は、その中でも特に注目すべき「北宸シリーズ クロノグラフ」を改めてご一緒に鑑賞していきましょう。
2023年モデルの進化:現代的な美意識との融合
2023年、北宸シリーズのクロノグラフは大きくアップデートされました。今回ご紹介するのは、従来の深邃なブルーに加え、新たにラインナップされたウォームグレーのモデルです。ブルーはジャガー・ルクルトの象徴的な色として様々な時計で輝いてきましたが、今回のウォームグレーは、よりモダンで洗練された印象を与えます。
ケース仕上げのこだわり
42mm径のステンレススチールケースは、厚さ13.39mmで、100m防水を備えます。ケース正面はピュアなポリッシュ(鏡面)仕上げですが、サイドやラグ部分はブリュット(ヘアライン)仕上げが施され、光の当たり方で表情を変える、非常に繊細な造りになっています。
Memovoxへのオマージュ
デザインの随所に、元祖Memovox極地響鬧腕時計へのオマージュが散りばめられています。特徴的な大きな王冠(クラウン)はそのままに、その隣のクロノグラフプッシャーは、角がわずかに丸みを帯びた四角形。これがケースラインと絶妙に呼応しています。
最大の見どころ:3層構造の文字盤
北宸クロノグラフの最大の魅力は、何と言ってもその文字盤です。2023年のリニューアルで、多くの時計愛好家が「よりモダンになった」と絶賛したのも、この文字盤の進化によるものです。
この文字盤は、内側から外側へ向けて「中央円盤」「時標環圈(リング)」「測速計(タキメーター)」の3つの構造で成り立っています。
漆工芸による深み
中央円盤と時標リングには、職人の手による漆塗装が施されています。透明漆と色漆を交互に何層も手作業で塗り重ね、その後、実に35層もの半透明漆を重ねます。そして最後に研ぎ澄まされた研磨技術で、鏡面のように光沢ある仕上がりにします。この一連の工程により、文字盤は深海のような深遠な透明感と、肉厚な質感を兼ね備えるのです。
色彩のコントラスト
中央円盤、サブダイヤル、時標リングはそれぞれ異なる研ぎ出し(仕上げ)が施されており、同じブルーでも異なるトーンと輝きを見せます。そこにアクセントとしてオレンジ色が配され、スポーティで活気ある雰囲気を演出しています。
機能配置の最適化:使い勝手の良さ
ダイヤルレイアウト
3時位置には30分計盤、9時位置にはスモールセコンド(小秒針)が配置されています。
以前のモデルでは12時間計盤がありましたが、今回のモデルでは常時駆動する小秒針が採用されました。これにより、時刻合わせが格段にしやすくなり、実用性が大幅に向上しています。
視認性
鏤空(ロクソウ)加工された針や時標には、ルミノバがたっぷりと塗布されています。暗所でも時刻が一目で読み取れるよう配慮されています。
中核を支える:キャリバー761
この北辰クロノグラフを支える心臓部は、自社製自動巻きムーブメント「キャリバー761」です。
スペック
振動数28,800振動/時、2つのゼンマイ鼓で駆動されるこのムーブメントは、65時間もの長時間動力貯蔵を実現。週末を挟んでも安心して着けられる、実用性の高い機能です。
構造
レギュレーターには無卡度(ウインカット)式の砝碼(おもり)つきバランスホイールを採用。また、導柱輪(カムレバー)式垂直クラッチを搭載しており、クロノグラフのスタート/ストップが滑らかで、秒針の連続性が保たれます。
見えないところへのこだわり:1000時間テスト
仕上げ(フィニッシング)
見える部分の美しさだけでなく、見えない部分へのこだわりもジャガー・ルクルトの真骨頂です。透過式サファイヤクリスタル裏蓋からは、日内瓦波紋(クテ・ド・ジュネーヴ)が施されたブリッジや、”JL”のロゴが刻印された镂空(ロクソウ)自動巻きローター、青焼きされたネジが確認できます。そして、肉眼では見えにくい底板には、魚鱗紋(フィッシュスケール)が施されています。このような「見せること」だけでなく「自分自身のために磨くこと」が、このブランドの品格を支えています。
1000時間テスト
裏蓋に刻印された「1000 hours control」の文字。これは単なるスローガンではなく、ジャガー・ルクルトが誇る内部品質認証です。ムーブメント単体だけでなく、ケースに収めた完成品に対して、実際の着用条件をシミュレートした過酷なテストが1000時間に及んで行われます。これは公式のクロノメーター認証をはるかに凌駕する、ブランド独自の厳しい基準です。
ライフスタイルに寄り添う:クイックチェンジシステム
この北辰クロノグラフは、2本のストラップが付属します。一本は精悍なステンレススチールブレスレット、もう一本はスポーティなブルーラバーです。時計本体に搭載されたストラップのクイックリリース機構により、工具不要で簡単に付け替えが可能です。スーツのビジネスシーンから、ジーンズのカジュアルシーンまで、その日の気分や装いに合わせて、簡単に雰囲気を変えることができます。
公式価格:131,000元
まとめ
私たちは以前から、ジャガー・ルクルトの全ラインナップの中で、北宸シリーズは特別な存在だと述べてきました。なぜなら、これは同ブランドが現在販売している(継続的に更新されている)シリーズの中で、唯一完全にスポーツウォッチを主軸に据えたコレクションだからです。
スポーツウォッチの分野においても、北宸シリーズは依然として特別な存在です。伝統的なスポーツウォッチとは一線を画し、ジャガー・ルクルト独自の「運動する優雅さ(Sporty Elegance)」という道を、確固たる風格で歩んでいます。
改めてこの北辰シリーズを目の前にして、私は依然としてこう思います。この時計は、本当に特別な存在だと。