ロンジンの二枚看板:省エネ長時間巻上げ機「L888」と高精度高頻度巻上げ機「L836」
スイス時計界の名門**ロンジン(Longines)**。2015年以降、同社は徐々に旧来の基幹ムーブメントを刷新し、新たな自社基幹機を開発してきました。
その中核をなすのが、**「L888」**と**「L836」**という2種類の自動巻きムーブメントです。
どちらも21世紀以降のロンジンを支える重要機ですが、設計思想は正反対。今回は、この2大ムーブメントの違いを、最新型番「L888.6」と「L836.6」を中心に解説します。
その1:L888.6 ― 省エネ・長時間巻上げのスタンダード
**「L888」**は、かつての名機ETA 2892-A2をベースとしたL619シリーズを置き換えるために開発された、ロンジンの**主力ムーブメント**です。
2025年現在、名匠(マスターコレクション)、コンクス(潜水表)、そして復刻モデルなど、ほぼすべてのラインナップに搭載されています。
特徴
* **長動力貯蔵:** 25,200振動(21,600 VPH)の低速回転を維持しながら、**72時間**もの動力貯蔵を実現。
* つまり、「動きが緩やか=エネルギー消費が少ない」ため、長期間の駆動が可能。
* **シリコン技術:** 最新型の**L888.6**では、遊丝(ヒゲゼンマイ)に**シリコン(Silicon)**を採用。
* これにより、従来の金属遊丝では難しかった、磁気に対する耐性と、温度変化に対する安定性を獲得しています。
* **COSC認定:** 搭載するモデル(例:ヘリテージ デュークス ディバージョン 39mm)は、**COSC(コンスタンタン・スイス時計公認機構)**による単品時計としての公認天文台認定を取得。
**補足:** このL888.6は、「ヘリテージ デュークス ディバージョン 39mm」に初搭載されました。このモデルは日付表示を廃し、1960年代の原点に回帰したデザインが特徴です。
その2:L836.6 ― 高速・高精度のスペシャリスト
一方の**「L836」**は、2022年に発表された、ロンジンが21世紀になって初めて手掛けた**高頻度自動巻き機**です。
こちらは、**「Ultra-Chunkmeter(ウルトラ・クロノメーター)」**と名乗る、特別なハイエンドシリーズにのみ搭載されています。
特徴
* **高振動数:** 5Hz(36,000振動 / 時間)という**高速回転**を特徴とします。
* 針の滑らかさが増し、また衝撃に対する耐性が向上します。
* **独自認証:** スイス公認天文台(COSC)の認証を受けた上で、更に厳しい基準を設けた**TIMELAB(ティムラボ)**による「Ultra Chronometer」認証を取得。
* 誤差は **-2〜+5秒/日** に収まる、極めて高い精度を持ちます。
* **抗磁性能:** シリアルシリコン遊丝を搭載し、**ISO規格の10倍**にあたる磁気に耐える設計です。
一目で分かる:L888 vs L836
比較項目 **L888.6** (主力機) **L836.6** (高精度機)
**開発目的** 汎用性・長動力貯蔵 高精度・高耐磁・高速
**振動数** 25,200 VPH (低速) **36,000 VPH (高速)**
**動力貯蔵** **72時間** 52時間
**シリコン部品** 遊丝 (L888.6のみ) 遊丝
**耐磁性能** 標準的 **ISO基準の10倍**
**精度認証** COSC (モデルによる) **TIMELAB Ultra Chronometer**
**主な搭載モデル** 名匠、コンクス、復刻潜水表 高頻度精密天文台シリーズ
総評:どちらを選ぶべきか?
* **L888.6 を選ぶ理由:**
* **「使い勝手」を重視する方**に最適です。
* 週末に時計を外しても、月曜日には動いている72時間の安心感。
* 汎用性が高く、カジュアルからフォーマルまで、幅広いシーンで活躍します。
* **L836.6 を選ぶ理由:**
* **「機械式時計の性能」にこだわる方**のための一枚。
* 高速で滑らかな秒針の動き、そして業界トップクラスの耐磁性能と精度。
* ロンジンの伝統的な「高振動」への回帰を象徴する、コレクターズアイテム的な価値があります。
ロンジンはこの2つのムーブメントを使い分けることで、**「伝統的な美学」と「現代のテクノロジー」**の両方を、手の届きやすい価格で提供しているのです。